第29回
未曾有の震災から二週間が経ちました。 仙台市中心部は、ある程度の落ち着きを取り戻しつつありますが、これからが本当の修羅場だと覚悟しながら「地域のために何が出来るか」を地域の仲間と必死に考えているところです。
衝撃で失った言葉が少しですが戻ってきました。それにしても生死の分かれ目の理不尽さは表現の領域を超えています。自然の脅威に文明の、人間の無力さだけが露呈しました。
当日夜の避難所で、暗闇の中で彷徨う無数の瞳、想像を超えた事象に失われた生気が翌日の朝日と共に蘇り出しました。早朝から炊出し準備が始まると威勢の良い声が響きました。支援するおばちゃんが「誰のせいでもない、ここから始めよう、やるしかないよ!」
実感したことがあります。携帯よりもネットよりも必要なものがありました。肉体労働の提供です。震災の一週間後に町内でボランティアを募集しました。学生や住民など約70名が参加してくれました。散乱した家財を一緒になって片付ける若者の姿に感動しました。当日避難所で一夜を過ごした若者が仲間を連れて来ました。一緒に汗を流すことで絆が生まれました。
人間は極限で本性を見せます。見苦しいこともたくさんありましたが、この若者達の胎動は次世代に繋がると確信できました。ぼんやりですが、私たちのこれからやるべきことも見えたような気がします。
我家にはいつもの朝が戻り、犬の散歩を再開しました。「自分に何が出来るのだろう」と自問自答しながら、傷が残る市街地を歩いています。急がないでじっくりと10年先を見据えて出来る事から始めようと思っています。
我々は本当に幸せです。すばらしい仲間と仕事をしていること、明日に向かう命が残っていること、元に戻すことは難しいかもしれませんが新たに創造することは必ずできると確信して足元から一歩一歩前に進みたいと思っています。
末筆ですが、心温まる励ましの言葉、身に余るご支援の数々、本当にありがとうございます。地域に笑顔が戻るように恩返ししてまいります。
平成23年3月25日
菅原 誠
株式会社エムジョイ代表取締役。
平成元年、地元テレビ局とタイアップした学生の就職支援イベント「探職フォーラム」が縁で脱サラ、独立。主に札幌・仙台を中心に学生と企業の求職・求人活動支援のコンサルティングを展開中。55歳。趣味は野球観戦、蘭、熱帯魚。