第15回
8日早朝、実家から新米がマンション玄関に届きました。30キロ×25袋、5世帯約1年分です。私と同い年の家督が毎年この時期になるとトラックで運んでくれます。もう10年以上続いていますが、市価よりも安く、しかも産地直送ですから安全で美味しいはずですね。今秋の宮城米は生産調整がうまく行かず価格が下落傾向と報道されています。ところが、実態は「良い米を作っているところはもう農協には出さないで直接販売している。」そうです。「毎年同じ手間暇掛けて安くされては合わないよ。農家の苦労なんかお上にはわからない。」こんなところにも参院選自民党大敗の原因が見え隠れします。
作付けも大きな農家なのですが、長男は仙台のIT企業に今年就職、長女も来春関東に巣立つ予定です。離れた小6の末っ子はまだまだゲーム遊びに夢中です。「農家だけでは食っていけないから残れ(継げ)とは言えないよ。」自分にも夢があったから「オレの代で終りたい。」が口癖ですが、もう少し頑張れ、とは言えない私がいます。小さい頃は羨んだりもしましたが、毎年作り続け、守り続けることの大変さを彼の姿を通してみていますから。ハウス栽培や減・無農薬など「農産品の高付加価値化」を試みますが、労働集約型では限界があります。食の安全が問われる時代に日本の食の作り手が疲弊しています。
土を耕し、種をまき、苗を育て、植え、水をやり、雑草を取り、風雨から守り、耐えて、待ち続けて、やがて収穫の時期を迎えます。嫌だからと逃げ出すことも、合わないからと代えることも出来ない。きっと日本人(先人)の忍耐力はこうして育まれたのでしょうね。農業だけではなく林業も漁業もどんどん高齢化が進んでいて後継者の育成もままならない状況と聞きます。少子高齢化は都会や企業だけではなく、日本全体の慢性的な労働力不足をもたらしていることに早く気づくべきでしたね。インターンシップ(職業体験)は農業研修、人材派遣も第一次産業を優先したほうが世のため人のためでしたね。
「やりたいことがわかりません。」「仕事をしている自分がイメージできません。」「何か楽しい仕事ないですか?」先日から大学3年生との就活イベントが始まりました。2009年春から、いわゆる「ゆとり教育世代」の学生が社会に出てきます。慢性的な若年労働力不足を背景に新卒市場はバブル期並み活況、超売り手市場ですが、中身は「大卒である必然性」さえ疑わしい状況です。確かに仕事は楽しい方が良いかもしれませんが、楽してお金がもらえるほど世の中甘くないでしょう。と怒ってみても子育て(人材育成?)に失敗したのは我々の世代ですかね。自戒を込めて「働くことの本質」を伝える1年だと思っています。
平成19年10月12日
菅原 誠
株式会社エムジョイ代表取締役。
平成元年、地元テレビ局とタイアップした学生の就職支援イベント「探職フォーラム」が縁で脱サラ、独立。主に札幌・仙台を中心に学生と企業の求職・求人活動支援のコンサルティングを展開中。55歳。趣味は野球観戦、蘭、熱帯魚。