第13回
北上川の傍で育ったためか台風に変な好奇心が働きます(笑)。小さい頃は台風が来ると父親と堤防の上から濁流を眺めたものです。消防団の人たちが忙しそうに見回っています。土手から川までの間には普段は広い畑があって、小さなグランドや冒険隊の基地、土管の要塞など自然の遊び場と道具がたくさんありました。それが一晩で飲み込まれてしまう光景を何度も経験しました。今のように電気事情もよくありませんからちょっとの嵐で停電、ロウソクに家族が寄り添ったものです。川上の集落から通学する生徒もいたので予報が出ると大抵学校は休みでした。自然の猛威が通り過ぎるまでじっと待つしか術がなかった時代です。
台風一過、抜けるような青空と眩しい太陽の下、網とバケツを持って水が引いた用水路に向かいます。急に水が引いて取り残された鯉やフナが簡単に掬えます。長靴に水が入り歩くたびにグシャッグシャッと音を立て、大漁のバケツを見せ合いながら泥だらけの子供たちの笑顔が弾けます。考えてみるとあの頃は何でも遊び道具にして楽しんでいました。基地や要塞も一から作り直し、グラウンド整備も流木拾いから始まります。流されたもの川上から流れてきたものに思いを馳せながら時間を忘れていたのもです。
先日の台風9号も大きな被害をもたらしました。最近の自然現象は極端に牙を剥くことが多いですね。それにしてもテレビのレポーター(特に民放)はわざわざ嵐の中に出て苦しそうな声で中継しています。意味あるの?といつも思うのですが、視聴率とりたいのかな?中州に取り残される人、屋根から落ちる人も必ずいますね。格差の象徴なのか無防備なのか、笑えない事実です。密かな楽しみは1時間ごとに更新されるインターネットの天気図ですね。予想進路もなかなかリアルで科学の進歩に感心させられます。
10月から緊急地震速報が始まるようですが人間は自然現象をどこまで制圧できるのでしょうか。ロウソクの時代を懐かしく思い出しながら、もう戻れないほど電気に依存した生活に一瞬畏怖するのは私だけでしょうか。備えあれば…防災用品見直します。
平成19年9月10日
菅原 誠
株式会社エムジョイ代表取締役。
平成元年、地元テレビ局とタイアップした学生の就職支援イベント「探職フォーラム」が縁で脱サラ、独立。主に札幌・仙台を中心に学生と企業の求職・求人活動支援のコンサルティングを展開中。55歳。趣味は野球観戦、蘭、熱帯魚。