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コラム

Mr.NOの「いまどき社員の育て方・育ち方」

人事担当者として20年のキャリアを持つMr.Noによる
採用・社員研修の事情についての辛口トーク。
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<第04回>「なぜ就職するのか?なぜ仕事をするのか?」

「原点回帰」

前回「採用時点から育てる」という方法をご紹介しましたが、近年はその目的で、大学3年生の秋口から「採用に関係しないオープンセミナー」と称したものが流行しています。採用に直結しないとはいうものの、実は採用担当者との接触頻度が増しますから、現実は大なり小なり、影響を及ぼすのが必然です。
多少余談になりましたが、メールの出現によって、会話の楽しさを味わったことの無い、可哀想な若い人が増えたと思ってください。就活にもエントリーから結果報告までメールの時代です。それでありながら、若い人に望むのが「コミュニケーション能力」が第一位とは、これは全く変な話です。

通常は、それぞれの業界の入門編の話が主流ですが、私個人は「上手な就職活動の進め方」というテーマ設定でオープンセミナーを開催してきました。もちろん、これは表題で、実際のところは「目的意識」や「成功や幸福」がテーマです。ところがこれを大上段に掲げますと、かなり哲学的に見えてしまい、及び腰になりますから、直接的な就職活動をテーマにしたわけです。いささか詭弁のようですが、「なぜ就職するのか」「なぜ仕事をするのか」といった質問に対して、明確な返答が出来る若者はほとんどいません。
ところが、面接などで、この「目的意識」を追及され、悩みだすことがきっかけとなって、就職活動中の学生の自殺者が3倍になったというニュースがありました。そんな馬鹿な、と思われるかもしれませんが、自殺までとは行かなくとも、“うつ状態”に陥る学生は多々発生します。

では、既存社員は、「なぜ働くのか」という質問に答えられるでしょうか。おそらく、学生と一緒で、「そりゃあ、生活のためでしょう」とためらいながら返答する人がほとんどではないでしょうか。
「21世紀の最大の課題は、漫然としたうつ状態である」と予言したのは、ユングとV・フランクルですが、厚生労働省のデータによれば、現に日本の40代のサラリーマンの4人に3人が「潜在的うつ病患者」と言われますが、今では30代がピークになりつつあります。

戦後の高度成長期のテーマは「楽に生活が出来るようになる」を目的として「頑張ってきた」わけです。ところが、それが満たされた結果、日本や日本人が行く先を見失ってしまって、アメリカ流の「合理主義」「個人主義」に走ってきたわけです。ところがバリバリの農耕民族の日本人にとって、このアメリカナイズが、「コミュニティ」や「コミュニケーション」を喪失させる原因となったのは皮肉としか言いようありません。まして、世界で最も売れたビジネス書「7つの習慣」のモデルは、従来の「日本型家族経営」で、アメリカの企業が、日本型経営に近づこうとしてきたのに、逆に当の日本では、日本型を捨てて、アメリカ型を取り入れようとしたのですから、なんとも茶番です。

余談ですが、ISOのモデルは、日本のQCなのに、日本の企業はこぞってISOに走りました。ところが、トヨタ自動車は、自社の「カイゼン」が一番といって、ISOに走りませんでした。そろそろトヨタのような「日本ナイズ」する企業が増えて欲しいものです。

本題に戻りますが、初期段階での「目的意識」や「原点」の教育は、若い人にとってかなり新鮮に映ります。採用の段階でも、「企業理念」や「ミッションステートメント」が好まれます。「理念で飯は食えない」という既存社員は多いでしょう。しかし、目的が見えなくなった時ほど、「原点回帰」が必要です。常に原点を探るような研修はいかがでしょうか。
とくに若手はえり好みしませんから、まじめに取り組んでくれます。

プロフィールMr.NO

  • S34年 宮城県生まれ
  • S58年 大学卒業後 7年間の住宅営業を経て、研修・採用担当として20年間実務にたずさわる
  • 自他ともに認める いのしし年、B型、さそり座の典型人間?